相続の対象となるのは、相続財産、すなわち相続開始時の被相続人の財産ですから、動産もすべて遺産分割の対象となります。ただ、動産には財産的価値の低いものが少なくなく、形見分けとして、相続人、場合によっては親しい友人、知人といった相続人でない人達で適宜分配することがよく行われます。その分は、遺産分割協議書こそ作成しないものの、共同相続人間で遺産分割の方法を定める遺産分割協議が成立したものと解されます。したがって、共同相続人の一部が無断で行うと、相続財産に対するほかの相続人の共有持ち分の侵害となりますし、感情的なしこりを生みかねませんので、あくまでも共同相続人全員の合意のもとで行うべきです。
これに対し、財産的価値のある動産は、遺産分割協議書に明記し、後のトラブルが生じないようにするべきです。そこで、このような動産の記載については、遺産分割協議によって特定の相続人が取得する遺産の範囲を明確にするため、具体的な記載に努めましょう。遺産の中に、ほかに同種の動産がない場合や、それがあっても共同相続人が容易に識別できる場合には簡単な表記で足りますが、そうでないときは、品名、大きさ、形状、色、製造会社、機種、型番等を記載して、疑義を生じさせない工夫が必要です。
・自動車の相続について
登録自動車について所有者の変更があったときは、新所有者は、その事由があった日から15日以内に、国土交通大臣の行う移転登録の申請をしなければなりません。したがって、遺産分割協議によって自動車を取得した相続人は、移転登録の申請をする必要があります。
なお、申請にあたっては、一般に申請書、遺産分割協議書、戸籍謄本等、相続人の印鑑証明書、実印、自動車検査証、手数料納付書、車庫証明書、自動車税申告書を用意する必要があります。