遺言執行者は、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有するとされます。
遺言執行者は、遺言が遺贈や財団法人設立のための寄付行為など財産に関するものである場合には、目的財産の受遺者への引渡しや移転登記などの履行行為等をする権利を有します。
また、遺贈の目的が不動産である場合には、遺言執行者は、受遺者に対する所有権移転の登記義務を負担し、受遺者への移転登記は遺言執行者と受遺者との申請によることになります。なお、遺贈の目的である不動産の所有権登記名義人が相続人以外の者であれば、遺言執行の一環として、当該名義人に対して、被相続人からの移転登記の抹消又はこれに代わる移転登記を請求して、いったん被相続人名義にしてから、受遺者への移転登記手続きを行うことになります。
そして、遺言執行者がある場合には、相続人は、遺言の対象となった相続財産の処分その他遺言の執行を妨害するような行為は一切禁止されます。禁止される相続人の行為は遺言の内容により異なりますが、特定物の遺贈の場合では、その目的物の処分行為や管理行為となります。具体的には、遺贈の目的となっている家屋を譲渡したり、その上に抵当権を設定したり、あるいは賃料を受領したりする行為が該当するとされています。
なお、相続人が遺言の対象となっている相続財産を処分してもその処分行為は無効とされています。判例では、遺言執行者がある場合において、相続人から不動産の譲渡を受けた者は、たとえその旨の登記をしていても、民法177条の第三者には該当しないとされています。また、相続人が第三者のために抵当権を設定しその旨の登記をしても、受遺者は、遺贈による目的不動産の所有権の取得を登記なくして第三者に対抗することができるとしています。
民法1012条1項
遺言執行者は、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。
民法1013条
遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない。