建物の保存登記をする前に所有者に相続があった場合について教えて下さい。

まず、建物の保存登記とは、表題登記のしてある建物について最初にする権利に関する登記です。この登記をしておかないと、お金を借りた場合などに抵当権の設定登記ができないなど不都合が生じることになります。また、表題登記だけでは第三者に対抗する権利が認められませんので、表題登記が完了した後、なるべく早めに保存登記をする必要があります。

保存登記をする前に所有者に相続があった場合

建物を新築した後、建物の表題登記をしたが保存登記をしないでいたら、その所有者が死亡した場合について、登記の方法は2つあります。

1つ目は、被相続人(亡くなった人)の名義で保存登記をする方法です。表題部に所有者として記録されている人は、所有権の保存登記を申請できます。したがって、被相続人の名義で保存登記を申請することもできます。実際には相続人が登記申請の手続をしますが、その場合、相続を証する情報を提供して、相続人全員ではなく相続人の1人から申請することができます。被相続人名義で保存登記をする理由としては、被相続人が保存登記をする前に建物を売買していた場合などが考えられます。例えば、Aが表題部に所有者として記録されている場合、Aが保存登記をする前にBに建物を売却した場合に登記の名義をBにするためには、いったん、Aの名義で保存登記をする必要があります(区分建物を除きます)。表題登記しかしていない状態では権利の移転、変更等の登記はできないからです。そして、A名義で保存登記をした後にAからBへの所有権移転登記を申請することになります。

2つ目は、相続人名義で保存登記をする方法となります。表題部に所有者として記録されている人の相続人は、保存登記の申請人になることができます。すなわち、被相続人の名義ではなく、直接、相続人の名義で登記をすることができるということです。なお、当該建物を共同相続人全員が相続により取得した場合には、共同相続人全員または共同相続人の一人から、保存行為として共同相続人全員のために所有権保存の登記を申請することができます。その場合、申請人とならない相続人には登記識別情報が通知されないので注意が必要です。