相続する財産が相続税の基礎控除額未満の場合でも、相続税申告はすべきでしょうか。

相続税の課税価格を構成するすべての要件を具備しており、かつ、評価計算に誤りがないのであれば、申告の必要はありません。

ただ、相続税の評価計算は難しいので、同一の相続案件を10人の税理士が同一の資料によって担当したとしても、10人が同一の回答を出すとは限りません。相続税の財産評価の方法には一定のルールがありますが、個別の財産の事情により微妙な斟酌を要するものがあるところから、あるいは、納税者の利益を考慮することにより、10通りの回答になる可能性があるからです。

また、財産の評価計算は、ことに不動産や同族会社の株式(出資金)の評価は極めて難しいとされます。そのうえ、相続税の課税価格に算入されるのは現実に残された遺産だけではなく相続開始前3年以内の生前贈与財産が加算される場合もあります。したがって、微妙なところで申告義務がないように計算されるようならば、とりあえず申告書を提出しておいた方が賢明な場合もあります。その理由は、計算の基礎を認識するうえで情報の誤り等が後日に判明して納税義務が生じた場合におけるペナルティの軽重が異なってくるからです。

なお、小規模宅地等の評価の特例は、相続税の期限内申告書にこの規定の適用を受けようとする旨を記載し、その計算に関する明細書その他所定の書類の添付がある場合に限り適用されることになっています。つまり、相続税の申告書を提出しなければ受けられない特例があるということも理解しておく必要があります。