一部分割の有効性
相続の際、遺産分割協議を行った後、相続人が認識していなかった新たな遺産が判明する場合があります。この場合の遺産分割は、遺産の一部を脱漏した遺産分割であり、結果として一部分割となります。遺産の一部分割については、直接の規定はないのですが、有効であると解されています。ただ、有効となるためには、一部分割の部分と残余部分とを明確に分離した上分割するとの合意が必要であるとされています。また、「一部分割をなすべき合理的理由があり、かつ民法906条所定の分割の基準に照らして遺産全体の総合的配分に齟齬をきたさず、残余財産の分配によって相続人間の公平をはかることが可能である限り」有効であるとする裁判例もあります。したがって、遺産の一部を脱漏した遺産分割も原則として有効です。
ただし、最初の分割時に未判明の財産の存在が相続人らに判明したのであればそのような分割をしなかったと考えられる場合には、最初の分割は錯誤無効となり、全遺産を対象として新たな遺産分割を行うことになります。
・残余の遺産の分割方法
最初の遺産分割協議が有効である場合には、残余財産についてのみ新たな遺産分割協議を行えば足ります。遺産分割は法律上「一切の事情を考慮して」行われますが、新たに判明した遺産の分割時に、最初の遺産分割の時の各相続人の取得財産の価額の差異も、「一切の事情」として考慮できると考えてよいとされています。
・参考判例
一部分割をなすべき合理的理由があり、かつ民法906条所定の分割の基準に照らして遺産全体の総合的配分に齟齬を来さず、残余財産の分配によって相続人間の公平を図ることが可能である限り、一部分割を当然無効とする必要はない(大阪家審昭51.11.25家月29.6.27)。
遺産が数個存在するとき、その一部分の遺産分割協議も有効になし得るものと解されるが、その場合には相続人間において当該部分と残余部分とを明確に分離した上分割するとの合意が存在しなければならない(福岡家小倉支審昭56.6.18家月34.12.63)。