遺言書に「相続させる」とあった場合の解釈については、遺贈かそれとも遺産分割方法の指定かという法的性質の問題と、当該遺産の承継の効力が生じる時期がいつかという効力発生時期の問題があります。判例・学説では、①遺贈と解し、遺言の効力発生と同時に承継の効力が生じるとする見解、②遺産分割方法の指定であり、承継の効力が生じるためには遺産分割協議を要するとする見解、③遺産分割方法の指定と解しながら、遺言の効力発生と同時に承継の効力が生じるとする見解、の3説の対立がありました。ただ、最高裁が③の見解を採用する判断を示しましたので(最判平3.4.19)、実務上は③の見解を前提に遺言の解釈がなされています。
登記実務においては従前から、「相続させる」旨の遺言があったときには、遺産分割協議がなくても相続を原因とする所有権移転登記の申請を受け付けるという取扱いがなされています。③の見解は登記実務を是認した判断といえ、また、遺言の効力発生と同時に当該遺産が相続により当該相続人に承継されるとすることは遺言者の意思にも合致するものといえます。
・参考判例
特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」趣旨の遺言は、遺産分割方法を定めた遺言であり、特段の事情が無い限り、被相続人の死亡の時に直ちに当該遺産が当該相続人に相続により承継されるとの解釈を示した事例(最判平3.4.19)
遺言者の相続人甲乙がある場合に「遺産の全部を長男甲に相続させる」とある場合、「長男甲にA不動産、次男乙にB不動産を相続させる」とある場合、「遺言者は次のとおり遺産分割の方法を指定する。長男A農地、次男B農地」とある場合、「相続」を原因として権利移転の登記をする(昭47.4.17民甲1442号)。