連帯保証債務の相続について

 相続人は、一身専属権を除き、相続開始の時から被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継します。したがって、金銭債務も相続の対象となります。ただ、保証債務のうち、債務者と主債務者間の取引から発生する一切の債務を無制限に保証する債務については、責任の範囲が広範になるため、相続の対象となり得るかが問題となりました。この点、継続的取引から債務者が将来負担する債務の連帯保証人が死亡した事案ですが、判例は、死亡前に具体化した保証債務は金銭債務に転化しているので、その相続性を肯定しつつも、このような保証契約は当事者の人的信用関係を基礎とするものであるから、「保証人たる地位は、特段の事由のない限り、当事者その人と終始するものであって、連帯保証人の死亡後生じた主債務については、その相続人においてこれが保証債務を承継負担するものではない」と判示して、連帯保証人の死亡後に生じた債務は承継されないとしました(最判昭37.11.9)。

また、連帯保証人の相続人が複数いる場合に、死亡前に具体化した保証債務について、相続人はどのように保証債務を承継するかについて、判例は、連帯債務者の一人が死亡し、その相続人が数人いた事案について、「相続人らは被相続人の債務の分割されたものを承継し、各自その承継した範囲において、本来の債務者とともに連帯債務者となるとしています(最判昭34.6.19)。

・参考判例

貸貸借契約における保証人の相続人は、その相続開始後に生じた賃料債務についても、保証の責めを負う(大判昭9.1.30)。

将来生ずべき債務につき金額の限度を定めてなした保証債務は相続人に承継される(大判昭10.3.22)。

連帯債務者の一人が死亡し、その相続人が数人ある場合に、相続人等は被相続人の債務の分割されたものを承継し、各自その承継した範囲において、本来の債務者と共に連帯債務者となる(最判昭34.6.19)。

継続的売買取引について将来負担することあるべき債務についてした責任の限度額並びに保証期間の定めのない連帯保証契約における保証人たる地位は、特段の事由のない限り、当事者その人と終始するものであって、保証人の死亡後生じた主債務については、その相続人においてこれが保証債務を負担するものではない(最判昭37.11.9)。