賃借権は、財産上の権利であり、賃借人の一身に専属する権利ではありませんので(大判大13.3.13)、相続財産に含まれます。これは不可分債権のため、遺産分割の対象にもなります。では、遺産分割により借地権を取得した場合には、地主との関係でどのような手続きを取るべきでしょうか。まず、借地人が交代するわけですので、当然、遺産分割により借地権を承継したことを地主に報告すべきです。このとき、金融機関の相続手続きと異なり厳密な確認資料を要求されることは考えにくいのですが、地主に示すべき書類としては、本来的には遺産分割協議書、及び相続関係を証する書面として戸籍・除籍謄本が挙げられます。
また、相続により借地権を包括承継したわけですから、借地権の譲渡には当たりません。したがって、地主から承諾を得る必要がないことになります。また、譲渡承諾料を支払う義務もありません。
なお、遺産分割協議を行うに当たっては、相続財産の価額を評価する必要がありますが、借地権価額の評価方法に関しては、取引事例比較法、土地残余法等様々な方法があり、借地権の取引慣行の成熟の程度の高い地域と低い地域でその手法を異にするのが一般的です。どの方法を採るかは共同相続人の協議により決めることになります。
借地権の相続税の財産評価は、宅地と同様、路線価地域であれば路線価に基づいて計算されます。その評価は、その宅地の自用地としての価額に、路線価図の借地権割合を乗じて計算されます。また、相続開始直前において被相続人の居住の用に供されていた宅地を同居の親族が相続により取得して引き続き居住する場合などには、小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例により、課税価格が減額されます。この特例の適用を受けるためには、相続税申告書に小規模宅地等に係る課税価格の計算明細書を添付する必要があります。