葬式費用の負担について

 葬式費用とは

葬式費用について、その内容を記した規定は存しませんが、一般には、棺その他の祭具、葬式場設営、読経、火葬の費用、墓標の費用、通夜・告別式の参列者の飲食代、納骨代等が含まれるとされています。これに対し、墓地の費用、葬式後の見舞客の食事代は、一般には、葬式費用には含まれません。初七日の法要、四十九日の法要の費用についても、葬式費用には含まれないとされています。葬式費用は相続開始後に発生する費用であり、遺産ではありませんが、相続に付随する問題として遺産分割で協議されることが少なくありません。

葬式費用の負担者

葬式費用の負担者については、特別の規定が存しないため、いくつかの見解があり、判例も分かれています。この点について、(1)葬式主宰者、いわゆる喪主が負担するとする喪主負担説(東京地判昭61.1.28)、(2)相当な葬式費用は相続人の共同負担とするとする相続人負担説(東京高決昭30.9.5)(3)葬式費用は相続財産に関する費用に含まれるとする相続財産負担説(盛岡家審昭42.4.12)等があります。なお、葬式費用と香典の関係ですが、香典は、葬式費用の一部を負担し、遺族の負担を軽減することを主な目的とする相互扶助に基づく金銭等の贈与と考えられており、一般には、香典の額が葬式費用及び香典返礼費用を上回る場合には、香典によりこれらの費用を清算した残額は相続財産ではないので、葬式主宰者が取得し、香典の額から香典返戻金の額を控除した残額が葬式費用に満たない場合は、その負担者を決定することとなります。

相続税の債務控除

相続により取得した財産について課税価格に算入すべき価額は、相続税法により、当該財産の価額から「被相続人に係る葬式費用」を控除することができるとされています。ただし、香典返戻費用、墓碑及び墓地の買い入れ費並びに借入料、法会に要する費用等は、控除される葬式費用には含まれません。初七日や四十九日の費用は、法会に要する費用ですから、控除できないことになります。