遺産分割後に特定の財産が遺産でなかったことが判明した場合の相続について

 当初の遺産分割協議で遺産として分割した財産が、実際には遺産ではなかった場合、遺産分割協議が錯誤により無効となる可能性があり、また、共同相続人間で担保責任が発生することが考えられます。

遺産分割協議が錯誤により無効となる場合の錯誤とは、その錯誤に陥っていなければ遺産分割協議に応じなかったであろうと認められる程度に重大なことについての錯誤である必要があります。

また、共同相続人の担保責任とは、相続人が遺産分割の結果得た物又は権利に瑕疵がある場合に、ほかの共同相続人が、その相続分に応じて、売主と同じ担保責任を負担する責任をいいます。売主と同じ担保責任とは、民法570条のいわゆる瑕疵担保責任となります。

遺産分割は、実質的には持分を譲渡ないし交換する有償行為と考えられますので、遺産分割をした共同相続人間に担保責任が認められるのは当然ということができます。遺産分割の遡及効を重視しますと、相続人は相続開始時から取得した遺産を所有していたことになり、有償行為がないので、担保責任を負う必要はないことになりますが、実質面を重視して、共同相続人間の不公平を是正するために担保責任が定められています。

参考判例

・審判手続きにおいてした前提事項に関する判断には既判力が生じないから、これを争う当事者は別に民事訴訟を提起して前提たる権利関係の確定を求めることを何ら妨げられるものではなく、そして、その結果、判決によって前提たる権利の存在が否定されれば、分割の審判もその限度において効力を失うに至るものと解される(最大決判41・3・2)。

・遺産分割の審判において、その対象となった物件の一部が、その後の判決によって遺産でないとされたときには、その遺産でないとされた物件が前の審判で遺産の大部分又は重要な部分であると扱われていたなどの特段の事情がない限り、遺産でないとされた物件についての前の審判による分割の効力のみが否定され、その余の物件についての分割は有効であると解するのが相当である(名古屋最高決平10・10・13)。