祭祀財産

 祭祀財産とは、祭祀を営むために必要な「系譜、祭具及び墳墓の所有権」のことをいいます。系譜とは、家系図など先祖代々からの家系を書き記した文書や図書をいい、祭具とは、神棚、位牌、仏壇など先祖や親族の祭祀を行うために用いる用具をいいます。墳墓とは、土葬の場合の遺体や火葬の場合の遺骨を葬る目的で設けられた墓碑、埋棺、霊屋などの設備をいいますが、その維持のために必要な土地の所有権や墓地使用権も含まれます。そして、これらの祭祀財産については、相続とは異なる制度として、独自の方法と順序で祭祀承継者が定められています。

・祭祀財産の承継

上記のような祭祀財産は、相続財産に当たらず、祭祀を主宰する者が承継します。誰が祭祀を承継するかは、第1に被相続人が指定した者、第2に被相続人が指定した者がいない場合は、地方の慣習、第3に慣習も明らかでないときは、家庭裁判所の審判または調停により定められます。

・墓地と登記

祭祀財産のうち「墳墓」には、墓石のみではなく、墓地の所有権や使用権も含まれると解されています。ですから、祭祀財産である墓地を所有していた祭祀主宰者が死亡した場合、祭祀財産の承継を証する書面を提出して、「民法887条の規定による承継」を登記原因とする所有権移転登記をすることができるとされています。

なお、登記簿上の地目が墓地である土地について、相続を原因とする所有権移転登記の申請があった場合でも、受理して差支えないとされています(昭35.5.19民甲1130)。ですから、登記簿上の地目が墓地である土地について、相続による所有権移転の登記又は民法887条の規定による承継を原因とする所有権移転登記のどちらも受理されることになります。