家督相続とは、戸籍上の家の長として、これまで戸主がもっていた地位を、次に戸主となる者が1人で承継することをいいます。家督相続人は、その地位の承継の結果として、前戸主が有していた財産上の権利義務を承継します。
この家督相続は、旧民法上の制度であり、昭和22年5月2日までに開始した相続について行われます。ただ、家督相続は必ずしも戸主の死亡によってのみ発生するわけではなく、隠居なども開始原因となります。隠居とは、戸主がその家督相続人に戸主の地位を譲ることを意味します。つまり、旧民法の適用される相続においては、死亡以外にも権利義務の承継が行われる場合があるということです。
相続による不動産の名義変更(相続登記)において、家督相続人は、登記原因を「家督相続」として、単独で所有権移転の登記を申請することができます。登記原因証明情報としては、家督相続人からの家督相続届に基づき同人の戸籍に家督相続の旨が記載された戸籍謄本のみを提出すれば足りるとされています。つまり、誰から誰に家督相続したということを証明できればよいのです。