共同相続人の中に、被相続人から遺贈を受け、又は婚姻・養子縁組のための贈与もしくは生計の資本として贈与を受けた者がある場合に、そのまま法定相続分で相続をするのは不公平となることがあります。そこで、相続人間の公平を図ることを目的に、前記の特別な贈与を相続分の前渡しとみて、贈与の価額を遺産分割協議の際に組み入れて、各相続人の具体的な相続分を計算する制度です。
特別受益がある場合の相続分の具体的な計算方法は以下のようになります。
相続人が複数おり、そのうちの一部または全部が特別受益を得ている場合の計算方法は少々複雑になります。
1.まずは、通常どおり相続開始時の遺産の総額(ア)を把握します。続いて、相続人が被相続人の生前に被相続人から受けた贈与の額(イ)を把握します。
2.上記(ア)と(イ)の額を合算した遺産の額(みなし相続財産)を相続分計算の基礎とします。
3.みなし相続財産に相続分の率を乗じて各相続人の取得すべき相続分(「本来の相続分」もしくは「一応の相続分」)を算出します。
4.生前贈与もしくは遺贈(特別受益)を受けた相続人(特別受益者)については、その額を本来の相続分から控除します。この結果得られる金額が、当該特別受益者の相続分となります。
なお、上記3のように、生前の贈与の額を遺産の額に加算する計算方法を「持戻し」と呼んでいます。