遺言信託

 遺言信託とは、信託銀行の業務の一つで、遺言者と相談して遺産の分配方法を決めて公正証書遺言を作成し、遺言者の死後に遺言執行を引き受けることをいいます。遺言信託の本来の仕組みは、遺言者が相続を受けさせる相手が未成年者や重病のため財産の管理能力がない場合に、信託銀行に相続財産を委託して管理・運用してもらい、その収益を相続人が受け取るというものです。

具体的には、主に遺言書作成にあたっての相談業務、遺言書の作成支援、遺言書の保管までをサポートする契約と、遺言者の死亡後も引き続いて遺言執行者として遺言内容の実現をはかる契約の2種類に分けられます。ただ、遺言信託で扱う遺言は、財産に関することに限られ、相続人の廃除とか、子供の認知などについては扱われませんし、また遺留分を侵害するような場合にもトラブルがおきる可能性が高いので、扱われません。

遺言信託を利用するメリットとしては、金融機関という組織が扱うものですから数十年先まで安心して預けられること、また、資産運用の相談や税金対策などトータルな専門的アドバイスが受けられることなどです。他方、デメリットとしては基本手数料など費用が高く、誰もが手軽に利用できるという内容にはなっていないことが挙げられます。

・遺言信託の費用

遺言信託には、基本手数料のほかに、相続が開始するまで毎年発生する遺言書保管料や遺言執行報酬などがかかります。遺言信託を扱っているのは、民間の信託銀行や都市銀行等ですから、費用は統一基準はなく違いはありますが、おおよそ次のようになっています。

1.契約時の基本手数料 約5~10万円

2.遺言書の保管料   年5,000~1万円

3.遺言書の内容変更手数料 約5万円

4.遺言執行報酬 最低報酬額が約100万円で、相続財産の0.5~2%程度(相続財産により異なる)

このほか、公正証書遺言作成費用、不動産登記簿謄本・戸籍謄本等の請求費用などがかかります。

遺言信託は前述したように、遺言者の財産を管理・運用することによって得られる利益を利用者に支給することが目的の一つですから、信託銀行等も不動産や動産等の財産が1億円を超えるような資産家を対象としているように考えられます。