こんにちは、司法書士の渡辺憲久です。今回は、相続人が海外在住の場合の相続手続きについて書いていきます。
相続を相続人法定の間で、遺産分割協議によってするときは、通常、法定相続人が用意する書類は、戸籍謄本、住民票、印鑑証明書が必要です。ですが、相続人の方が海外に居住されており、住所も海外に置かれている場合、日本の役所で、印鑑証明書と住民票の交付を受けることができません。
法定相続人が海外に居住している場合は、日本における住民票は、除票扱いとなります。海外に居住している日本人の除票には、例えば、アメリカ合衆国、ニューヨーク州、ニューヨーク市に転出と記載されているだけです。また、印鑑証明書も、除票扱いとなっています。
このような場合は、現地の日本領事館でサイン証明(署名証明書)と在留証明書を発行してもらい、印鑑証明書に代わる書類と、住所の証明書として扱うことになります。署名証明は、在外公館が発行するもので、申請者の署名及び拇印が領事の面前でなされたことを証明するものです。
サイン証明と在留証明を用意することになるのは、法務局での不動産の名義変更と、金融機関での預貯金の解約についても同様です。
サイン証明(署名証明書)発行の手続
相続登記の添付書類として使用する、サイン証明(署名証明書)発行を受けるための具体的な手続は次のとおりです。
- 遺産分割協議書を在外公館(外国にある日本国大使館、総領事館)に持参して、領事の面前で署名および拇印を押捺します。
- 上記の遺産分割協議書と署名証明(サイン証明)書を綴り合わせて割り印をしてもらいます(奥書認証)。
なお、遺産分割協議書への署名は領事の面前で行う必要がありますので、事前に署名をせずに持参しなくてはなりません。また、領事館等に行く際は、日本国籍を有していることが確認できる書類(有効な日本国旅券、本邦公安委員会発行の有効な運転免許証)も併せて持参します。
また、署名証明(サイン証明)には、上記と合わせて2種類の方法があります。
- 持参書類(遺産分割協議書)とサイン証明を綴り合わせて割印し、一体の書類としたものに奥書認証したもの。
- 申請者の署名を単独で証明するもの(サイン証明のみを単独で発行)。
登記申請に使う場合は、原則として1の方法によるサイン証明を使用することになります。